二 口頭弁論に関するもの
1 口頭弁論の準備
  口頭弁論の実施を、迅速にしかも遺漏なくすることができるためにはあらかじめ相手方の主張・立証の内容が予告され、それに対する応答の準備ができていることが必要である。そこで、民訴法は、口頭弁論の準備のための制度として、準備書面と争点整理手続(準備的口頭弁論、弁論準備手続、書面による準備手続)を設けている。
 (1) 準備書面
   準備書面とは、自らする主張と証拠申し出を相手方に予告するための書面であり、民訴法161条にいう準備書面のほか、訴状の任意的記載事項(民訴規則53条)、被告が最初に提出する書面としての答弁書(民訴法158条、民訴規則79条)、証拠申出を記載した証拠申出書が含まれる。
   準備書面に記載しない事実は、相手方が在廷しないときは口頭弁論で主張できない(民訴法161条3項)。
   準備書面に記載すべき事項は、民訴法161条2項が定めている。
 @ 攻撃又は防御の方法(1号)
   準備書面に事実についての主張を記載するときは、できる限り、請求を理由づける事実としての請求原因事実、抗弁事実又は再抗弁事実とこれらに関連する事実(間接事実)についての主張を区別して記載する(民訴規則79条2項)。
 A 相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述(2号)
   相手方の請求に対する陳述は、被告が最初に提出する準備書面たる答弁書において、「原告の請求を棄却する」等と記載するもので、相手方の攻撃防御の方法に対する陳述とは、相手方のした主張についての答弁(「認める」「知らない」「争う」等)を記載するものである。なお、準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなければならない(民訴規則79条3項)。
 (2) 争点整理手続
 @ 準備的口頭弁論
   準備的口頭弁論とは、原被告両方が、主要事実及び間接事実等の主張とこれらに対する認否・書証の提出・証拠の申し出等を行うことにより、当該訴訟の真の争点を早期に確定することを目的として実施される口頭弁論の一種で、新民訴法により新たに設けられた手続である(民訴法164条以下)。
   この手続が終了すると、新たな攻撃防御方法の提出は、「相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない」という制約を受ける(民訴法167条)。
 A 弁論準備手続
   弁論準備手続とは、口頭弁論における審理、とりわけ証拠調べを集中的・能率的に行えるようにするために、争点及び証拠の整理を目的としてなされる手続のことで、民訴法168条以下にその詳細が定められている。旧民訴法での準備手続の名称を改めたものである。
   この手続が終了すると、その結果は口頭弁論期日において陳述される(民訴法173条)が、その後新たな攻撃防御方法の提出は、「相手方の求めがあるときは、相手方に対し、弁論準備手続終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない」という制約を受ける(民訴法174条、167条)。
 B 書面による準備手続
   書面による準備手続とは、前述した準備手続の一種で、遠隔の地に居住する当事者等の便宜を図るため、「音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」(いわゆる電話会議システム)で争点及び証拠の整理等をすることができる手続で、新民訴法により新たに設けられた手続である(民訴法176条)。
   この手続終了後の新たな攻撃防御方法の提出には、同様の制約がある(民訴法178条)。
2 口頭弁論の進行
 (1) 概説
   原告が訴状を裁判所に提出すると、裁判長は訴状審査権を行使し(民訴法137条等参照)、その訴状が適法であると認めると訴状副本を被告に送達する(民訴法138条)が、その際、同時に、裁判長は第1回の口頭弁論期日を指定し、原告と被告の双方を呼び出す(民訴法139条)のが通常である。
   期日呼出しを受けた当事者双方又はその訴訟代理人等が、裁判所の法廷に出頭すると、民訴規則62条により「事件の呼上げ」がなされて期日が開始される。事件の呼上げは、裁判長、裁判所書記官又は廷吏によって、事件番号、事件名、当事者名等を文字通り呼び上げることによって行われる。そして、この開始された期日において、当事者は、訴状、答弁書、準備書面等に基づいて主張をし、証拠申出書等に基づいて証拠の申し出をし、裁判所は、出頭した証人について証人質問等の証拠調べをし、更には判決の言渡しをする。
   口頭弁論期日は、当事者双方が出頭して争われるときは、1回で終了することは少なく、まず当初の何回かは双方が訴状、答弁書、準備書面等に基づいて主張をして争点を浮き彫りにし、その後争点である事実等について当事者双方から証拠申請がされ、これに基づき裁判所が書証、証人尋問等の証拠調べを行い、「訴訟が裁判をするのに熟した」(民訴法243条1項)と判断したときに口頭弁論を終結し、判決の言渡しをすることになる。
   期日が開かれたが何の主張・立証もなされずに次の期日が指定される場合を「延期」といい、何らかの主張・立証がなされたが次回も続行するという場合を「続行」と呼ぶ。次回期日が指定された場合、出頭した者に対しては口頭で告知されるだけであるが、不出頭の者に対しては呼出状が送達される(民訴法94条)。
 (2) 当事者の欠席
 @ 当事者双方の欠席
   口頭弁論期日は当事者双方を呼び出して開かれるが、当事者の双方ともその期日に出頭しないことがある。この場合に、裁判所が取り得る措置としては次の3つがある。
 イ 休止
   その期日に何もしないのみならず次回期日の指定もしないことで、実務上「休止」と称されている(ただし、原告が訴訟追行の意思を有していると認めるときは、裁判所は、休止の措置は採らず、単に次回期日を「追って指定」する)。訴えを提起した原告さえも出頭しないということは、その原告が果たしてその訴えを追行する意思を有しているのか疑問であることから、それより1か月以内に期日指定の申立てがなされない限り、訴え取下げが擬制される(民訴法263条)。なお、被告のみ出頭して原告が不出頭のときでも、被告において特に当該訴訟の追行を欲する場合を除き、被告は「弁論をしないで退廷」するのが通例なので、この場合も休止の措置がとられる。なお、新民訴法により、口頭弁論期日でない弁論準備期日に欠席したときも休止の措置を採ることができる。
 ロ 弁論終結
   それまでに当事者双方が攻撃防御を十分になし、裁判所において判決をするに熟していると判断するときは、当事者双方不出頭のまま口頭弁論を終結することもできる。
   ただし、この措置がとられるのは、当事者双方が何らかの方法により裁判所に対し弁論終結の希望を伝達し、形式的に口頭弁論期日に出頭しないときのような場合に限ってであって、実務上稀なケースである。
 ハ 証拠調べの実施
   当事者双方は欠席しているが呼出しを受けた証人等が出頭しているような場合に、その証人等について証人尋問を実施する等の証拠調べをすることができる(民訴法183条。ただし、現実にこの措置がとられることは少ない)。また、裁判所が判決の言渡しをすることもできる(民訴法251条2項)。裁判所が当事者の一方又は双方の申し出に基づき証拠決定をし、証人等を口頭弁論期日に出頭するよう命じている以上、証人等の便宜を考えなければならないというのが前者の理由であり、民事訴訟の場合は判決の言渡しが行われても判決書の正本がその後当事者双方に送達される(民訴法255条)ので、当事者双方が在廷しないまま判決の言渡しをしても当事者に不利益ではないというのが後者の理由である。なお、実務では判決言渡期日には当事者が双方とも欠席することが多い。
 A 当事者一方の欠席
   裁判長の指定した口頭弁論期日に当事者の一方が不出頭の場合、原告のみが不出頭のときは上記1で述べた休止の措置が採られることが多く、ここで問題となるのは主として被告不出頭の場合である。そして、上記のとおり口頭弁論の終結や出頭した証人等に対する尋問及び判決言渡しは、当事者双方不出頭の場合でも可能であるから、その一方が不出頭のときにも当然可能である。
 イ 擬制陳述
   当該口頭弁論期日がその裁判所で審理が行われる最初の期日(前に期日が開かれても、それが延期となっているときは、次回期日が「最初の期日」である。)であるときは、その時までに不出頭の当事者から提出された訴状・答弁書その他の準備書面は陳述が擬制される。続行期日にはこの規定の適用の余地はない(ただし、簡易裁判所においては、民訴法277条により、続行期日についても擬制陳述が可能である。)。なお、この擬制陳述は原告から提出された訴状その他の準備書面についても可能であるが、実務上は、被告不出頭の場合における答弁書その他の準備書面の擬制陳述が大部分である。
 ロ 擬制自白
   民訴法159条3項の擬制自白である。例えば、原告から訴えが提起され、第1回の口頭弁論期日の呼出しがなされた場合、原告は出頭しているのに被告が出頭しないときは、裁判所は直ちに口頭弁論を終結して、次回期日に判決の言渡しをすることが通例であり、この場合、民訴法159条3項の適用により、不出頭の被告は、原告が訴状に基づき陳述した事実を自白したものとみなされる。
   もっとも、民訴法159条3項は、口頭弁論が終結されるまでいずれの期日にも不出頭のときに適用されるものであるから、裁判長が事案の性質その他から新たな期日を指定し、その期日に今度は被告が出頭したときは、第1回の期日に不出頭であったからといって民訴法140条3項は適用されない。
   なお、同項の適用があるのは、被告等に対する呼出しが公示送達以外の送達方法によっているときに限られる(民訴法159条3項ただし書)。


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