5 訴えの変動 (1) 訴訟物の変動 原被告間である訴訟物について審理がされている途中で訴訟物が変動する場合があり、民訴法は、同一原被告間における訴訟物の変動の制度として、訴えの変更(民訴法143条)、反訴(同146条以下)、中間確認の訴え(同145条)の3つを規定している。 @ 訴えの変更 民訴法143条1項本文は、「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる」と規定しており、これを訴えの変更という。すなわち、訴えの変更とは、原告が旧訴に代え(交換的変更)又は旧訴と共に(追加的変更)、新訴を提起することを認めるものであり、この新訴については、旧訴についてなされた主張・立証の結果(訴訟状態)がそのまま利用される。 ただし、訴えの変更については一定の要件があり、@「請求の基礎に変更がない」こと、A「これにより著しく訴訟手続を遅滞させる」ものでないこと、B「口頭弁論の終結」前であること、の3つの要件が必要である(民訴法143条1項)。このほか、交換的変更は、旧訴を取り下げ新訴を提起するものであるから、旧訴取下げにつき民訴法261条2項の相手方の同意を要する。追加的変更は、民訴法136条にいう請求の併合が生じるから、同条に定める要件を満たす必要があると共に、併合の態様につき、単純併合、予備的併合、選択的併合のいずれであるかを明らかにする必要がある。なお、内金100万円の請求を全額の金200万円の請求に直すように、その金額だけを増加させる訴えの変更を、「請求の拡張」という(減額だけをすることを「請求の減縮」というが、これは訴えの一部取下げである。)。 「請求の基礎に変更がない」とは、新旧両訴が社会生活上同一又は一連の紛争に関するものであることである(もっとも、被告の同意があれば、請求の基礎の同一性の要件は不要である。)。 例:境界確定請求を係争地の所有権確認請求に代えるのは交換的変更であり、売買代金支払請求に遅延損害金の支払請求を付加するのは、追加的変更である。 訴えの変更は、書面を裁判所に提出し、被告に送達されることになる(民訴法143条2、3項)。訴えの変更の申立てが要件を満たさないときは、裁判所は変更を許さない旨決定する(民訴法143条4項)。 A 反訴 民訴法146条本文は、「被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる」と規定しており、これを反訴という。すなわち、反訴とは、被告の原告に対する新訴の提起であり、訴えの追加的併合の一種である。反訴は、原告の被告に対する本訴の請求又はこれに対する防御の方法と関連するときに限り、口頭弁論終結時までに、これをすることができる。 例:原告が被告に対し所有権に基づき甲建物の明渡しを求めている本訴に対し、被告が原告に対し同建物につき被告が賃借権を有することの確認を求める反訴を提起する場合。 反訴は、本訴に準じた手続で審理される(民訴法146条2項)が、反訴の要件を欠くものであるときは、その反訴は不適法として却下される。 B 中間確認の訴え 民訴法145条1項本文は「裁判が訴訟の進行中に争いとなっている法律関係の成立又は不成立に係るときは、当事者は、請求を拡張して、その法律関係の確認の判決を求めることができる」と規定しており、これを中間確認の訴えという。すなわち、中間確認の訴えとは、旧訴についての審理中に、その当否の判断の前提問題(先決関係)をする法律関係の存否についての確認を求める訴えであって、原告が提起するときは訴えの追加的変更の、被告が提起するときは反訴のそれぞれ一態様である。 例:原告が被告に対し所有権に基づき建物の明渡しを求めている訴訟において、更に原告がその建物の所有権確認を求める訴えは、中間確認の訴えである。 中間確認の訴えの提起は、書面によることが必要であり、その書面は相手方に送達される(民訴法145条2項)。 (2) 訴訟主体の変動 原被告間の訴訟係属中に、他の第三者が当該訴訟に当事者として加入したり、原告又は被告が他の第三者と交替したり、他の第三者が原告又は被告に助勢するという、訴訟主体の変動の事態が生ずることがある。主なものとしては、@独立当事者参加(民訴法47条)、A共同訴訟参加(民訴法52条)、B訴訟承継(後述)、C補助参加(民訴法42条)がある。 @ 独立当事者参加 民訴法47条は、「訴訟の結果によって権利が害せられることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる」と規定して、その第三者が当該訴訟に当事者として参加することを認めており、これを独立当事者参加という。 すなわち、独立当事者参加とは、原告と被告との間で係属している民事訴訟につき、第三者(当事者参加人)が、@その訴訟の結果により直接又は間接にその権利を侵害されると主張するとき(詐害防止参加)、又は、Aその訴訟の目的たる権利関係の全部又は一部が自己に帰属すると主張するとき(権利主張参加)に、その原告又は(及び)被告に対する各請求を明示してする参加のことであって、原告・被告の双方を相手方として参加がされたときは、この参加の結果、原告・被告・参加人の三面訴訟関係が成立する。 例:原告Aが被告Bに対し甲建物につき所有権に基づく所有権移転登記の抹消登記手続を請求している場合において、被告Bから更に同建物を買い受けた第三者Cは、AB間の訴訟の結果によっては自己の権利を侵害されるから、詐害防止参加ができるし、またCが、同建物はもともと自己の所有物であると主張するときは、権利主張参加をすることができる。この場合、参加人Cは、Aに対する請求(例えば、甲建物につきCが所有権を有することの確認を求める。)とBに対する請求(例えば、所有権移転登記手続を求める。)を明示して、独立当事者参加する。 このように、独立当事者参加は、参加人が原告と被告の双方又は一方を相手としたいわば新訴の提起である。旧民訴法の下では一方のみを相手としたものは認められなかったが、新民訴法は、右批判を一部採り入れた形で、「その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として」と定めたことから、参加人は、同人と争う意思を有する原告又は被告のみを相手方としてこの申立てをすることもできるとされた。 なお、独立当事者参加にあっては、訴訟脱退が認められる(民訴法48条)。 A 共同訴訟参加 民訴法52条は、「訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる」と規定して、その第三者が当該訴訟に当事者として参加することを認めており、これを共同訴訟参加という。 すなわち、共同訴訟参加とは、第三者が原告又は被告の共同訴訟人として加入し、その参加の結果、必要的共同訴訟として民訴法40条の適用を受ける場合をいう。なお、ここにいう必要的共同訴訟には、先に述べた類似必要的共同訴訟の場合のみならず、固有必要的共同訴訟の場合も含まれる。 例:株主Aが原告となり会社Cを被告として株主総会決議取消訴訟を追行中に、他の株主Bが自ら原告となって会社Cを被告に同決議取消訴訟を提起する代わりに、AC間の訴訟に原告Aの共同参加人として参加するのは類似必要的共同訴訟に関する共同訴訟参加であり、甲地の共有者の1人Aが原告となり隣地である乙地の所有者Cを被告として境界確定訴訟を追行しているとき、共有物についての同訴訟は固有必要的共同訴訟であるから、本来ならば右訴えは却下されるが、甲地のもう1人の共有者Bが原告Aのために共同訴訟参加すればその瑕疵は治癒される。
B 訴訟承継
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