4 訴訟要件
 (1) 意義
   原告の申立ては、原告の被告に対する権利主張としての「請求」と、この請求を訴訟手続にのせるため原告が裁判所に対しての「訴え」の双方を含むものであり、訴えが適法であることが請求の当否についての判決(本案判決)の要件であるが、本案判決をするために必要な要件のことを訴訟要件という。
   訴訟要件は本案判決をするために必要な要件であるから、訴訟要件が具備しているか否かの判断の基準時は、本案についてのそれと同じく、口頭弁論終結時である。したがって、訴え提起時においてこれを具備していても口頭弁論終結時までにこれを喪失すればその訴えは不適法になるし、逆に訴え提起時に具備していなくとも、口頭弁論終結時までにこれを具備すればその訴えは適法になる。
   裁判長の訴状審査権の対象となる事項(民訴法137条参照)も訴訟要件に含まれるが、判決によらず裁判長の訴状却下命令により訴状が却下されるという点で、特別な訴訟要件と解される。
 (2) 内容
 @ 概説
   訴訟要件については、民訴法に統一的な規定はないが、各所に散在する規定その他を整理すると、主な訴訟要件は次のとおりである。
 イ 当事者がわが国の裁判権に服すること
   国家主権の範囲として、主として国際法の問題である。
 ロ 訴え提起が有効なこと
   いわゆる氏名冒用訴訟の場合、原告とされる者は訴え提起行為をしないので、その訴えは不適法となる。
 ハ 当事者が実在し、当事者能力を有すること
 ニ 同一事件につき訴訟係属がないこと(民訴法142条)
 ホ 同一の訴えにつき本案判決後訴えの取下げをしていないこと(民訴法262条2項)
   第一審及び第二審の本案判決後であっても、判決確定前であれば訴え取下げが可能である(民訴法261条1項)が、裁判所がせっかく本案の終局判決をしたのにそれを徒労に帰せしめた以上、同一事件につき再訴を提起することは禁止される。
 ヘ 原告に訴えを提起する正当な利益(訴えの利益)があること
 ト 原告及び被告に当事者適格があること
 チ 当事者間に、不起訴の合意・仲裁契約の合意・訴え取下げの合意等が存在しないこと
   原告と被告との間で、口頭弁論終結時までに民事訴訟による紛争解決を欲しない旨の合意が成立しているときは、これを尊重すべきである。
   以上の訴訟要件は、訴訟制度を正しく運営していくという公益上の要求から認められたものが大部分であり、裁判所が職権でその有無を調査しなければならない(職権調査事項)が、上記チのように被告の利益のためのものもあり、これについては被告の主張を待って判断すべきである(妨訴抗弁)。
 A 訴えの利益
   民事訴訟は、民事紛争を解決する手段として存在するから、民事訴訟による解決に値する紛争の存在することが必要である。この場合、民事訴訟が紛争解決という目標に役立つことを1つの利益として考えるならば、原告から申し立てられた訴えにこの利益(訴えの利益)が存在することが必要となる。
   訴えの利益は、訴えの客体に着目した利益であり、次に述べる当事者適格が訴えの主体に着目した利益であることと対比される。そして、この訴えの利益は、厳密にいうと、原告からされた訴えが、判決によって確定されるに適する紛争としての性質を有すること(権利の保護の資格)、及び判決によって解決されるべき現実の必要ないし利益を有するものであること(権利保護の利益)を意味する。
  例:確認の訴えにあっては、自然科学上の学説の当否の確認を求めるものは法律上の紛争ではないとして権利保護の資格を欠く。原告の所有地であることを争わない(確認の利益がない)被告を相手にしてその土地の所有権の確認を求める訴訟も権利保護の利益を欠く。また給付の訴えにあって、「あらかじめその請求をする必要」がないのになされた将来の給付の訴え(民訴法135条参照)や、既に給付判決を得ているのに再び同内容の給付の訴えを提起することも、やはり権利保護の利益がない。
 B 当事者適格
 イ 意義
   当事者適格は、訴えの利益が訴えの客体に着目した利益であるのと異なり、その主体(原告・被告)に着目した利益である。すなわち、当事者適格とは、上記のように検討した訴えの利益のある民事紛争を、現に原告となっている者と被告となっている者との間で争わせるのが適切かどうかという問題である。
   当事者適格は、給付の訴えにあっては、現に原告となり被告となっている者にそれぞれ原告適格及び被告適格があり(当該請求が理由のあるものであるかどうかは、当事者適格の問題ではない。)、確認の訴えにあっては、先に述べた確認の利益と不可分のものとして当事者適格が判断され、形成の訴えにあっては、原告又は被告となるべき者の範囲が法により明示されており、その者が当事者適格を有する(例えば、株主総会決議取消の訴えにあっては、商法247条1項により、「株主」、「取締役」、「監査役」が原告適格を有する。)。
 ロ 訴訟代位
   当事者適格は、訴えの対象となった権利関係の本人にあるのが通常であるが、他の第三者が本人に代わって当事者適格を有する場合があり、これを訴訟代位という。第三者の訴訟追行の結果である判決は、民訴法115条1項2号が「当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人」のためにもその効力を有すると規定していることから、原告又は被告にならなかった本人(他人)に対しても、その既判力が及ぶ。訴訟代位は、各種の法律に散在しているが、その代表的なものとして、債権者代位権者、差押債権者、選定当事者がある(そのほか、破産法162条の定める破産管財人、会社更生法97条の定める管財人等がある)。
 (ア) 債権者代位権
   民法423条の定める債権者代位権の場合、その要件を満たす限り債権者は債務者に代わって権利を行使することができ、民事訴訟の提起追行もこれに含まれる。
  例:AがBに対して有する金200万円の売買代金債権保全のため、AがBに代わってその有するCに対する請負代金200万円の支払請求訴訟を提起することができる。この訴訟においては、AのBに対する売買代金債権の存在が代位原因であるが、代位原因の存否はAB間では確定していないので、AC間の判決の効力が本人たるBにも及ぶ(民訴法115条1項2号)のは、この代位原因が存在する限りである。AC間の代位請求訴訟係属中に、Bにおいて代位原因の不存在を主張したいときは、BがA及びCに対する請求を明示して、独立当事者参加をする。
 (イ) 差押債権者の取立訴訟
   債権者が債務者の第三債務者に対する債権を差し押さえたときは、この差押債権者は債務者(本人)に代わってその第三債務者に対して有する債権を取り立てることができ、その旨の訴訟を提起追行することができる(民事執行法155条1項又は国税徴収法67条1項等)。
  例:AがBに対し売買代金200万円の支払いを求めることができる給付判決が確定し、その強制執行として、裁判所からA(債権者)がB(債務者)のC(第三債務者)に対して有する金200万円の請負代金の差押命令を取得したときは、Cが取立てに応じない限り、AはBに代位してCに対し請負代金支払請求訴訟を提起できる(民事執行法155条1項)が、この場合、Aは本人Bに代位して請負代金支払請求訴訟の原告適格を有することになる。
 (ウ) 選定当事者
   民訴法30条1項は、「共同の利益を有する多数の者」は「その中から全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定」することができると定めている。
  例:1つの交通事故でA1ないしA10までの10名の者が被害を受け、全員が加害者Bに対し損害賠償を請求したい場合、A1ないしA10までの者は、当該請求をするにつき共同の利益を有する者であるから、A1ないしA10まで10名の代表としてA1がその総請求金額(合計金額)につきBに対し賠償請求訴訟を提起でき、この場合、A2ないしA10までを選定者、A1を選定当事者という(同条4項)が、A1はいわばA2ないしA10の9名に代位して訴えを提起・追行しているのであり、選定当事者A1と相手方Bとの間でなされた判決の効力は、当然、選定者A2ないしA10に及ぶ(民訴法115条1項2号)。


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