3 管轄
 (1) 意義
   原告が訴えを提起したい場合、全国的にみると最高裁判所は1つであるものの、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所及び簡易裁判所は複数あり、このうちどの裁判所に提起すればよいかという問題があり、これを管轄の問題という。すなわち、管轄とは、各裁判所間の事務分担の定めである。
   なお、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所には、本庁と支部等があるものがあり、また、同じ本庁内又は支部内であっても、複数の部があることが、これらの本庁と支部又は部同士間の事件分担の定めは、同一の高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所内の司法行政上の問題(事務分配)であり、管轄の問題ではない。
 (2) 種類
   管轄については、民訴法その他の法律がこれを定める(法定管轄)が、場合によってはこれが変更されることがある。
 @ 法定管轄
 イ 職分管轄→裁判所の行う種々の作用をどの種類の裁判所に分担させるのかの問題
   民事訴訟に関する職分管轄について、簡易裁判所に関しては、裁判所法33条1項が「簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。」とした上、同項1号が「訴訟の目的の価額が90万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)」とし、地方裁判所に関しては、同法24条が「地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する」とした上、同条1号が「第33条第1項第1号の請求以外の請求に係る訴訟及び同号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審」とし、同法3号が「第16条第1号の控訴を除いて、簡易裁判所の判決に対する控訴」とし、高等裁判所に関しては、同法16条が「高等裁判所は、左の事項について裁判権を有する」とした上、同条1号が地方裁判所の第一審判決・・・に対する控訴」とし、同条3号が「刑事に関するものを除いて、地方裁判所の第二審判決・・・に対する上告」とし、最高裁判所に関しては、同法7条が上告を扱う旨を定める。
   したがって、通常の民事訴訟は、
  @簡易裁判所(第一審)→地方裁判所(第二審)→高等裁判所(上告審)
  A地方裁判所(第一審)→高等裁判所(第二審)→最高裁判所(上告審)
  の2つのルートがあることになるる。
   なお、同じく民事に関する裁判手続であっても、強制執行手続は地方裁判所又は執行官が管轄し(民事執行法2条、3条)、訴え提起前の和解手続(いわゆる即決和解)、少額訴訟、督促手続は、簡易裁判所の管轄である(民訴法275条、368条、383条)。
 ロ 事物管轄→第一審民事訴訟事件の分担を簡易裁判所とするか地方裁判所とするかの問題である。
   裁判所法33条1項1号、24条1号によれば、「訴訟の目的の価額」が90万円以下の請求については簡易裁判所が、同価額が90万円を超える請求及び不動産に関する請求については地方裁判所がこれを管轄する(したがって、同価額90万円以下の不動産に関する請求については、簡易裁判所と地方裁判所が競合的に事物管轄を有する。)。
   なお、訴訟物の価額の算定に当たっては、民訴法8条のほか、併合請求の場合は民訴法9条による(価額の合算と附帯請求の価額不算入)。
 ウ 土地管轄→民事訴訟を、どの簡易裁判所、地方裁判所に提起したらよいかの問題、すなわち所在地を異にする同種の裁判所間の事務分担の定めの問題。同種の裁判所間の問題であって、異種の裁判所間の問題ではない。
   ある土地と裁判所との結びつきは「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律」によって定まっており、民訴法は、4条ないし7条により、土地と事件とを結び付けている(事件からみた関連ある土地のことを「裁判籍」という。)ので、結局、上記両法により或る具体的な事件と裁判所との結び付きが定まる。
   実務上よく使われる裁判籍は、4条(普通裁判籍)、5条1号(義務履行地の裁判籍)、5条9号(不法行為地の裁判籍)、5条12号(不動産所在地の裁判籍)等である。1つの事件につき複数の裁判籍が生ずることがあるが、その場合は、いずれの裁判籍所在地の裁判所でも土地管轄がある。なお、民訴法4条を普通裁判籍、同法5条及び6条を特別裁判籍と呼ぶことがあるが、裁判籍であることに変わりはない。
  例:大阪市に住所を有するAが自動車を運転して、東京都に住所を有する歩行者Bに衝突し、怪我をさせ、その事故現場が名古屋市である場合において、原告Bが被告Aを相手に金100万円の損害賠償請求をするときは、地方裁判所レベルの土地管轄は、被告Aの住所地である大阪市を管轄する大阪地方裁判所(民訴法4条)、事故地である名古屋市を管轄する名古屋地方裁判所(同法5条9号)、原告Bの住所地である東京都を管轄する東京地方裁判所(同法5条1号、損害賠償債務も持参債務だから)が土地管轄を有する。
 ★併合請求における管轄
   民訴法7条は「一の訴えで数個の請求をする場合には、前三条の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる」と規定するが、これを併合請求の裁判籍という。この「数個の請求」には請求の客観的併合(民訴法136条)が含まれることは明らかであるが、主観的併合については、同法7条ただし書が、「ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る」と定め、同法38条前段の「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき」及び「同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき」には併合請求の裁判籍を生ずるが、同条後段の「訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくとき」には併合請求の裁判籍は生じない。
  例:大阪市に住所を有する自動車運転者Aと福岡市に住所を有する自動車運転者Bの共同過失により、名古屋市において、東京都に住所を有する歩行者Cに怪我をさせた場合において、被害者Cが加害者A及びBを共同被告として損害賠償請求訴訟を地方裁判所に提起するときは、上記にいう「同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき」に該当するから、原告Cは、加害者Bの普通裁判籍所在地の福岡地方裁判所に訴えを提起してもよい(名古屋地方裁判所、東京地方裁判所については、加害者Aとの間でも土地管轄がある)。
 A 管轄の定めの変更
   職分管轄、事物管轄、土地管轄は、法定管轄であるが、このうち当事者間の合意等で変更できるものとできないものがある。できるものを任意管轄といい、できないものを専属管轄といい、職分管轄は専属管轄であるが、事物管轄と第一審の土地管轄は任意管轄であるので、次の要件を満たす限り、法定管轄を変更することができる(民訴法11条、12条、13条)。
 イ 合意管轄→原告と被告との書面による合意により、第一審の事物管轄と土地管轄につき、先に述べた内容と異なる裁判所を管轄裁判所とすること(民訴法11条)。
  例:AとBとが契約書等の書面において合意することにより、AとBの住所・事件の種類・訴訟物の価額如何にかかわらず、東京地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすることができる。
 ロ 応訴管轄→被告が、「第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたとき」は、事物管轄及び土地管轄につき法定管轄のある裁判所と異なる裁判所に第一審訴訟が提起されたときでも、その応訴をした時点で管轄が生ずる(民訴法12条)。
 B 管轄の調査と移送
   原告から訴状の提出を受けた裁判所が、自己のところに管轄権があるかどうかについては、「訴え提起の時」において(民訴法15条)これを判断し、もし不明であれば職権証拠調べによって(民訴法14条)決する。
   訴状を受理した裁判所において、自ら裁判所に管轄がないと判断したときは、決定により管轄裁判所に移送する(民訴法16条)。この場合、自らの裁判所に管轄がある場合でも、「当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要と認めるとき」は「他の管轄裁判所」へ(民訴法17条ー遅滞を避ける等のための移送)、「簡易裁判所」が相当と認めるときは「その所在地を管轄する地方裁判所」へ(民訴法18条ー簡易裁判所の裁量移送)移送ができる。
   同一裁判所の本庁と支部との間の事件の移転は同一裁判所内部の司法行政上の措置であって「回付」と呼ばれ、「移送」ではない。


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