第三 民事訴訟手続各論

一 訴えに関するもの
1 訴えの提起
 (1) 訴状の提出
   私人が民事訴訟を提起するときは、「訴状」という書面を裁判所に提出する必要がある(民訴法133条1項)。
 (2) 訴状の必要的記載事項
 @ 総説
   訴状として最小限不可欠な記載事項は、民訴法第133条2項が@当事者、A法定代理人、B請求の趣旨、C請求の原因の4つを定めている。
   必要的記載事項は、裁判長の訴状審査権(民訴法137条1項)の対象になり、これを記載しない訴状は命令で却下されることになる(同条2項)。
 A 当事者
   当事者とは、原告及び被告のことであり、当事者たり得る資格(当事者能力)を有する者を当事者として記載する。当事者能力は、民法上の権利能力を有する自然人及び法人(民訴法28条参照)のほか、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」(民訴法29条。いわゆる権利能力なき社団又は財団)にもある。訴状に原告又は被告と表示された者がそれぞれ原告又は被告となる(表示説)。
 B 法定代理人
   現実に民事訴訟の法廷において訴訟活動をすることができるためには、一定の判断能力を有する必要がある(訴訟能力)が、当事者となった原告又は被告が定型的にみてそのような判断能力を有しない者(訴訟無能力者)であるときは、その者と一定の関係を有する者がその者に代わって訴訟活動をする必要がある。そして、民訴法28条は「訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法その他の法令に従う」と規定するから、結局、原告又は被告となった者が未成年又は禁治産者であるときは、親権者又は後見人がその法定代理人となる(民法3条、7条、8条、818条、819条。824条、838条、839条、840条、841条、859条参照)。また、民訴法37条は「この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え、又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する」と規定するから、原告又は被告が法人又は権利能力なき社団・財団であるときは、その代表者又は管理人が法定代理人となる。株式会社が当事者となるときは代表取締役が代表者であり(商法261条)、国が当事者となるときは法務大臣が代表者である(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律1条)。
   訴状には、原告又は被告が自然人でかつ未成年又は禁治産者でないときは、訴状に法定代理人の記載は不要であるが、未成年者であるときは親権者又は後見人を、禁治産者であるときは後見人を、法人又は権利能力なき社団又は財団であるときは代表者又は管理人を、それぞれ法定代理人として記載する。
 C 請求の趣旨
   請求の趣旨とは、原告が求める判決の主文であり、給付の訴えのときは給付それ自体が、形成の訴えのときは形成それ自体(例えば「原告と被告とを離婚する」とか「平成何年何月何日になされた被告の株主総会の決議はこれを取り消す」等)が請求の趣旨となるが、確認の訴えのときは確認を求める特定の権利関係の特定要素の全部(例えば「原告は甲建物につき所有権を有することを確認する」等)が請求の趣旨となる。
 D 請求の原因
   ここで請求の原因とは、原告の被告に対する請求権(訴訟物)を特定(識別)するに足る事項をいう。給付の訴えにあっては給付を除いた給付請求権の特定要素、形成の訴えにあっては形成を除いた形成要件の特定要素が、それぞれ請求の原因となるが、確認の訴えにあっては請求の原因による特定は不要である。
   請求を理由あらしめる主要事実としての請求原因事実及び中間判決の対象となる請求の原因(民訴法245条参照)とは区別される。
 (3) 訴状の任意的記載事項
   訴状には本来的には準備書面に記載すべき事項(民訴法161条2項参照)を記載することが可能であり、これを任意的記載事項という(民訴規則53条1項は「訴状には、請求の趣旨及び請求の原因(請求を特定するのに必要な事実をいう。)を記載するほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければならない」と規定している)。任意的記載事項は、必要的記載事項と異なり、後に述べる裁判長の訴状審査権の対象とならない。
   ただし、審理促進の見地から、民訴規則53条1項により、請求原因事実等も訴状に記載することが奨励されている。
 (4) その他の必要事項
 @ 印紙の貼用
   訴えを提起しようとする原告は、その訴状等に、手数料として、訴訟の目的の価額に応じて算出して得た額につき、収入印紙を貼付して納めなければならない(民事訴訟費用等に関する法律3条、4条、8条)。ここにいう訴訟の目的の価額は「訴えで主張する利益によって算定」(民訴法8条1項)する。印紙貼付の有無は、後に述べる裁判長の訴状審査権の対象となる(民訴法137条1項後段)。
 A 訴状送達が可能であること
   原告から提出された訴状は後に述べる裁判長の訴状審査を経た後、被告に送達される(民訴法138条1項)が、訴状送達が不可能であるときはやはり訴状が却下される(同条2項)から、被告に対する訴状送達が可能であることも訴え提起の要件である。
 ★送達は、裁判所書記官が、自ら又は執行官をして若しくは郵便により(民訴法98条、99条、100条)、それぞれ受送達者に交付することにより行われる(同101条)が、その送達すべき場所は「住所、居所、営業所又は事務所」が原則(同103条1項)で、場合によってはその勤務先となる(同条2項)。送達場所の届出が義務的である(同法104条)。なお、被告の住所・居所その他送達をするべき場所が不明であるときは、公示送達をすることになる(同法110条)。
 (5) 裁判長の訴状審査権
   裁判長は、@訴状に上記で述べた必要的記載事項が記載されているか、A所定の収入印紙が貼用されているか、B被告に対する訴状送達が可能か、についてそれぞれ審査し、これらの要件を欠いていると認めるときは、相当の期間を定めてその補正又は追貼を命じ(補正命令)、原告がこの補正命令に従わないときは、裁判長は訴状を却下(訴状却下命令)する(民訴法137条1、2項)。訴状却下命令に不服があるときは、原告は即時抗告ができる(民訴法137条3項)。この審査権は訴状送達前の権利であり、訴状が被告に送達された後にこれらの要件が欠けていることが発見されたときは、裁判所が判決により訴えを却下する(この場合の不服申立て方法は控訴)。
  ★判決・決定・命令
   裁判上の判断形式としては、「判決」「決定」「命令」の区別があり、裁判所(合議又は単独)がする判断を「判決」又は「決定」といい、合議体の一員がする判断を「命令」と呼ぶ。「補正命令」「訴状却下命令」は合議体の機関である裁判長が単独で行う裁判なので「命令」である。「判決」は、裁判所がする重要な意思決定であり、これに対する不服申立ては控訴又は上告であるが、「決定」及び「命令」は中間的な意思決定なので、これに対する不服申立ては抗告(即時抗告とは、不服申立期間の定めがある抗告のことである。民訴法332条)となる。
 (6) 訴状送達
   裁判長の訴状審査が終わると、裁判所書記官が訴状の写し(訴状副本)を被告に送達し、審理が開始される(民訴法138条)。訴状が被告に送達されることにより「訴訟係属」が生じる(民訴法142条参照)。


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