六 判決
1 種類
  判決は、原告のした訴え又は請求に対する裁判所の判断であり、その種類に分類することができる。以下、主な分類ごとに説明する。なお、実務上行われている判決のほとんどが、(1)でいう本案判決、(2)でいう終局判決、(3)でいう全部判決である。
 (1) 本案判決・訴訟判決
  訴訟判決→訴え自体を不適法として却下する判決
  本案判決→原告の被告に対する訴訟上の請求の当否について判断する判決
 (2) 終局判決・中間判決
  終局判決→裁判所が訴えの適否又は請求の当否についてする最終的判断としての判決(民訴法243条「裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする」)
  中間判決→訴えの適否又は請求の当否に対する最終的判断ではなく、それに至る中間的争いに対する判決(民訴法245条「裁判所は・独立した攻撃又は防御の方法その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間判決をすることができる。請求の原因及び数額について争いがある場合におけるその原因についても同様とする」)
   実務において中間判決がなされるのは極めて少数であり、ある訴えの適否が争点となり、裁判所が、その訴えは適法であって請求の当否について審理をしたいと考えた場合、「本件訴えは適法である」旨の中間判決をなし、その後の審理を軌道にのせる場合などが考えられる。
   なお、控訴・上告等の上訴は、終局判決に対してのみであって(民訴法281条、311条参照)、中間判決に対しては独立の不服申し立て方法はなく、後にされる終局判決に対して上訴することになる。
   また、民訴法245条の「請求の原因」は、請求を特定せしめるものとしての請求の原因(民訴法133条2項)、及び請求を理由あらしめる主要事実としての請求の原因(民訴規則53条1項にいう「請求を理由づける事実」)と異なり、数額を離れた、金銭支払請求における責任の原因程度の意味にすぎない。
 (3) 全部判決・一部判決
  一部判決→原告の申立ての一部についての終局判決(民訴法243条2項「裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局判決をすることができる」)
  全部判決→申立て全体に対する判決
 (4) 給付判決・確認判決・形成判決
   判決の効力からみた分類である。
  給付判決→被告に対し作為・不作為等の給付を命ずることを内容とするもので、給付の訴えでこれを認容する場合にされる判決であり、執行力がある。
  確認判決→原告から求められた特定の権利関係が存在するか存在しないかを裁判所が確認することを内容とするもので、確認の訴えにおける請求認容及び同棄却の判決のみならず、給付の訴え及び形成の訴えにおける請求棄却の各判決、訴えを却下する訴訟判決等がこれにあたる。
  形成判決→直接に法律関係の形成を内容とする判決で、形成の訴えにおいてこれを認容する場合にされる判決。形成力が問題となる。
2 効力
 (1) 既判力
 @ 意義
   既判力とは、同一紛争のむし返しを防ぐため、確定した終局判決が有する通用性ないし拘束力のことをいい、以後、後行する別訴においては、この判決と抵触する判断は許されないという効力のことをいう。確認判決のみならず、給付判決・形成判決においてもその認容・棄却を問わずすべて問題となる。
  例:原告甲野太郎の請求を棄却する判決が確定した場合、その後再び原告甲野太郎が同様の訴訟を提起してきたときは、被告乙野三郎は、前訴の判決の既判力を援用し、前訴の判決書を提出するだけで自らの立場を守ることができる。
   既判力については、@その人的範囲(主観的範囲)、Aその物的範囲(客観的範囲)、Bその時間的範囲(基準時)が問題となる。
 A 主観的範囲
   既判力は、当事者となった原告と被告となった者(又はこれに準ずる者)との間でのみ問題となる(民訴法115条1項は、「確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する」とした上、1号「当事者」、2号「当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人」、3号「前2号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人」、4号「前3号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者」と規定している)。
   民訴法115条1項2号にいう「他人」とは、債権者代位訴訟における債務者本人(当事者たる原告となるのは債務者でなく債権者である。)のこと等を意味し、同じく3号にいう「口頭弁論終結後の承継人」とは、相続・合併等による一般承継人と、債権譲渡・債務引受け等による特定承継人の双方を意味し、同じく4号にいう「請求の目的物を所持する者」とは、雇人・同居人・保管人のように、もっぱら本人のため目的物を占有する者をいう。
 B 客観的範囲
   既判力は、原則として訴訟物となった請求権についてしか及ばず、判決の理由中の判断については既判力は及ばない(民訴法114条1項は、「確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する」と規定している)。
  例:所有権移転登記抹消登記手続請求権を訴訟物とする訴訟の審理の中でAの代理権の有無が大きな争点となったとしても、その争点は判決理由中の判断にすぎず、それについて既判力が生ずることはない。
   なお、民訴法114条1項は「主文」と表現しているが、これは特定の請求権としての訴訟物を意味するものである。したがって、所有権移転登記手続請求権が訴訟物になっているときは、既判力はその請求権についてのみ問題となり、同じくAB間であっても、別の請求権(例えば売買代金請求権)ならば既判力の問題を考える必要がないことになる。
  ★同条2項は「相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する」と規定している。これは、相殺の抗弁を主張することは相手方に対し新しい請求をすることと同じことなので、判決理由中の判断であっても、「反対債権の不存在」又は「反対債権の存在と相殺による消滅」につき、既判力が生ずるとされたのである。
  例:AのBに対する1000万円の売買代金支払請求訴訟において、被告BがAに対して有すると主張する貸金200万円をもって相殺すると主張し、この相殺の主張の当否につき裁判所が判断したときは、判決理由の判断であっても既判力が生ずる。
 C 既判力の基準時
   既判力は、口頭弁論終結時におけるものである(民事執行法35条2項は「確定判決についての異議の事由は口頭弁論の終結後に生じたものに限り」と規定している)。
   口頭弁論終結時とは、確定した判決が一審限りであれば一審における口頭弁論終結時であり、控訴審・上告審のものであれば控訴審における口頭弁論終結時のことである。
 D 具体例
   原告Aが被告Bに対し平成7年1月1日の売買契約に基づく甲建物の売買代金1000万円の支払請求をし、平成7年10月15日に口頭弁論が終結し、同年12月20日に原告の請求を棄却する旨の判決がされ、この判決が確定したときは、既判力は、原則として、@原告Aと被告Bとの間で(主観的範囲)、A平成7年10月15日の時点で(基準時)、B平成7年1月1日の売買契約に基づく甲建物の売買代金支払請求権が存在しなかった(客観的範囲)、ということについて生ずることになり、もしAが再び原告となりBを被告として平成8年2月1日に同じく平成7年1月1日の甲建物の売買代金1000万円の支払いを求めて訴訟を提起したときは、裁判所は、被告Bの主張立証により、前訴の既判力に抵触するとの一事をもって、その請求を棄却する。
   これに対し、前訴の当事者Bと第三者Cとの間で上記AB間の甲建物の売買代金支払請求権が問題となったり、同じくAB間でも乙建物の売買代金支払請求権が問題となった場合は、それぞれ、主観的範囲、客観的範囲の点で、既判力に抵触しないことになる。上記の例で、原告の請求を認容する判決が確定し、その後、平成7年12月25日のBからAに対する売買代金の弁済が問題となったときも、基準時の点で、既判力には抵触しない。
 (2) 執行力
   執行力とは、判決で命じられた給付内容を実現するために民事執行法に基づく強制執行手続を利用できることをいう。確定した給付判決について生ずるのが原則であるが、確定前であっても判決に仮執行の宣言(民訴法259条)が付せられれば執行力が生じ、給付の訴えにあって被告が請求を認諾したり、訴訟上の和解においてその和解条項の中に給付条項が定められ、調書に記載されたときにも執行力が生ずる(民訴法267条参照)。
 (3) 形成力
   形成力とは、裁判により法律状態の発生・変更・消滅等の変動を直接に形成させる効力をいい、形成の訴えの請求認容の判決についてのみ生ずる。
   この効力は、対世的効力が生ずる。例えば、離婚を命ずる判決が確定すると、原被告間の婚姻関係終了という形成効が対世的に生ずる(訴訟の当事者以外の間でも離婚したものとして扱われる)。


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