4 立証の種類
 (1) 概説
   裁判所の事実認定の資料とされる証拠の種類については民訴法が具体的に定めており、同法にない証拠調べの方法は許されない。例えば刑訴法は、その306条等で「証拠物」の概念を認め、犯行に使われたピストルのような兇器それ自体を証拠とすることを認めているが、民訴法は「証拠物」という概念を認めていないので、民事訴訟において当事者が物自体を証拠としたいときは、次に述べるように、これを検証物として検証の申出をすることになる。
   なお、証拠の種類を考える場合、証拠方法と証拠資料の概念を区別する必要がある。証拠方法とは証拠調べの対象となるもののことであり、証拠資料とは証拠調べの結果として得られたもののことである。例えば証人尋問の場合は、「証人」が証拠方法であり「証言」が証拠資料となる。
 (2) 内容
 @ 証人尋間
   証人尋問とは、「過去の事実を体験した第三者」に法廷で供述してもらうことによって事実認定の資料とする立証方法である(民訴法190条以下)。すなわち、証人とは裁判所が証拠決定をした「自ら体験した過去の事実を報告する第三者」のことであり、代替性がないため、審理に必要である限り、強制的にその供述を求めることができる勾引という手続が定められており(民訴法194条参照)、また不出頭・証言拒絶・宣誓拒絶に正当な理由がないときは、罰金等の刑事罰又は過料の制裁がある(民訴法192条、193条、200条、201条5項参照)。更に、この証人が宣誓の上で虚偽の陳述をしたときは、偽証罪(刑法169条)として刑事罰に処せられることになる。
   なお、証人とは「自ら体験した過去の事実を報告する第三者」のことであるから、経験則ないし専門的意見を述べる「鑑定人」(代替性がある)、原告又は被告本人である「当事者」と異なる。
  例:原告Aの被告Bに対する甲建物の売買代金1000万円の支払請求において、平成7年1月1日の売買契約締結の主張が争われた場合、原告A又は被告B(双方申請でも可)においてその立会人Cにその目撃状況を供述してもらいたいときは、Cは「自ら体験した過去の事実を報告する第三者」に該当するので、この場合はCに対する証人尋問を実施する。
 A 鑑定
   鑑定とは、「専門的な知識又は経験則に基づく意見を述べる第三者」である鑑定人に書面(いわゆる「鑑定書」)又は口頭により、意見を述べてもらう立証方法である(民訴法212条以下)。鑑定人は、「専門的な知識又は経験則に基づく意見を述べる第三者」であるから、証人と異なり、代替性があるので、勾引の制度の適用はなく(民訴法216条)、したがって鑑定人に出廷を強く拒まれたときは別の者を選任するほかない。ただし、一旦、鑑定人となった以上はその職務を忠実になさなければならず、宣誓の上で虚偽の鑑定をすれば虚偽鑑定罪(刑法171条)として、刑事罰に処せられる。鑑定の場合、「鑑定人」が証拠方法であり、「鑑定の結果」が証拠資料となる。
  例:AのBに対する甲建物の売買代金1000万円の支払請求において、平成7年1月1日の売買契約締結の事実が争われた場合、売買契約書に記載してあるB名義の署名が果たしてBの筆跡かどうかを確めるため、第三者Cにその筆跡鑑定をしてもらう場合は鑑定である。
 B 書証
 イ 意義
   書証とは、「特定人の思想内容を表示する」文書を、裁判所が閲読することにより事実認定の資料とする立証方法である(民訴法219条以下)。
   民事訴訟にあっては、書証が最も基本的な立証方法であって、重要な書証の有無がその訴訟の勝敗を決するといっても過言ではなく、現に、特殊な民事訴訟手続である手形訴訟及び小切手訴訟においては、書証が原則的な証拠方法とされている(民訴法352条参照)。書証にあっては、「文書」が証拠方法であり、「記載内容」が証拠資料となる。
 ロ 形式的証拠力と実質的証拠力
   売買契約書等の特定の文書が事実認定の資料となる(=証拠力がある)といえるためには、その文書が、「特定人の思想表現であること」が確定されるとともに、その思想表現が「客観的な真実に合致すること」がそれぞれ必要であり、前者を形式的証拠力、後者を実質的証拠力という。
   そして、特定の文書の形式的証拠力については、その文書が誰の思想表現であるかを厳密に判定することはその文書の記載だけから判断するのは困難な場合があるので、書証の提出をする当事者に「誰の思想を表現したものであるか」を主張させ(例えば、特定の売買契約書につき「A名義部分はAが作成し、B名義部分はBが作成した」等と主張するようなこと。この主張は、売買契約書の形式的証拠力という証拠に関する主張として補助事実の主張である。)、これにつき相手方当事者に認否の機会を与え、その成立の主張に争いがあるときに初めて形式的証拠力の立証がなされるという手順が踏まれる。この場合、相手方当事者がする認否に際しては、いわゆる真実義務があり、「故意又は重大な過失により真実に反して文書の真正を争ったとき」は、過料の制裁がある(民訴法230条)。
   なお、法廷において、特定の名義人の記載のある文書が書証として提出された場合、その提出行為は、証拠申出の意味と、「その文書はその名義人が作成した」旨の主張が黙示的にされたという2つの意味があるのが通常である(名義人と異なる者が作成したと主張するときは、例えば「A名義部分はCが作成した」等とその旨を明示した主張がなされる。)。
   ところで文書には、「公務員が職務上作成した文書」である公文書と、それ以外の文書である私文書があるが、公文書については、民訴法228条2項が「文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する」と規定しているところから、特段の立証がない限り、その公文書は当該公務員の思想表現である(=形式的証拠力がある)と認定される。これに対し、私文書については、民訴法228条1項が「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない」、同4項が「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定めており、書証提出者がする形式的証拠力の主張につき相手方当事者がこれを争ったときは、提出者において形式的証拠力の存在につき立証する必要がある。ただ、特定の者が「署名した」あるいは「捺印した」ということが立証されれば、その者の思想表現であることが民訴法228条4項により推定されるので、特段の反証なき限り、その私文書はその者の思想表現であると認定される。
   なお、契約書等の私文書に押印してある印影が特定の者の印章と同一であれば、経験則からしてその印影はその者が押捺したであろうという事実上の推定がされ、その結果、その者が押捺した文書であるからその者が作成したと推定され(民訴法228条4項)、結局、その契約書はその者が作成したと認定される。
 C 検証
   検証とは、裁判宮がその五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)の作用によって、直接に対象物の性状や現象を検査しその結果を証拠資料にする立証方法である(民訴法232条以下)。
  例:土地の境界確定訴訟において、その係争現場を裁判官に視覚により見分する場合は検証である。
   この場合、証拠方法は検証目的物(検証物)であり、証拠資料は検証の結果である。
 D 当事者尋問
   当事者尋問とは、原告又は被告となった当事者本人から証拠として直接経験した事実につき供述させる立証方法である(民訴法207条以下)。証人と同様に宣誓の上で尋間がされる(民訴法207条)が、証人と異なり、出頭を強制する手段もなく、また虚偽の陳述をしても刑事罰ではない過料の制裁があるにすぎない(民訴法209条)。これは、当事者からは強制的にその陳述を聞く必要もないし、ある程度の虚偽の陳述をしても、さほど責めるわけにもいかないという事情による。当事者尋問にあっては、証拠方法は当事者本人、証拠資料はその供述である。
   当事者尋問は、既に述べたように、裁判所が職権で尋問することもできる(民訴法207条1項)が、同条2項は、「証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる」として、当事者尋問は証拠調べの最後に行われるのが原則である旨を定めている。
   当事者尋問の方法は、当事者が未成年者・禁治産者である場合における親権者・後見人等の法定代理人、及び当事者が法人である場合における代表者(株式会社の代表取締役等)を尋問する場合にも準用される(民訴法211条、37条参照)。


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