三 主張
1 意義
  申立ての中核的内容である訴訟上の請求は、原告の被告に対する一定の権利関係の主張ないし要求であるが、もしこの原告の請求に被告が応じ(請求の認諾)又は原告が自らその請求の理由なきことを認める(請求の放棄)場合でない限り、原告はその請求が理由のあるものであることを、被告はその請求が理由のないものであることを、それぞれ根拠づける必要がある。この根拠づけの作業が「主張」という当事者の行為であって、通常、原告、被告の双方が、具体的な事実を陳述することによって行われる。
  例:原告Aが被告Bに対し甲建物の売買代金1000万円の支払請求をする場合、Aにおいて「AとBは平成7年1月1日に甲建物をAからBに代金1000万円で売る合意をした」と述べて代金請求を根拠づけたり、Bにおいて「BはAに対し平成7年1月15日に甲建物の売買代金1000万円を支払った」と述べて代金請求は理由がないこととすること等が「主張」である。
2 方式
  原告及び被告がする主張については、民訴法87条1項が「当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない」と定めていることから、法廷において口頭で陳述されることが必要である(口頭主義)。
  ただし、口頭で陳述するといっても、法廷でいきなり口頭で述べることになると、民事訴訟の対象である民事紛争は複雑な内容を有することから、裁判所及び相手方当事者において当事者の述べた内容を正確に把握ないし記録することが容易でなく、また相手方当事者に対する不意打ちとなることを防ぐという意味からも、主張の内容は、準備書面という書面に記載して相手方当事者に予告しておく必要がある(民訴法161条1項「口頭弁論は、書面で準備しなければならない」。)。
  準備書面は、主として原告又は被告の主張を予告するための書面(民訴法161条2項は準備書面の記載事項を定めているが、主張は同項1号にいう「攻撃又は防禦の方法」及び同項2号にいう「相手方の…攻撃又は防御の方法に対する陳述」に含まれる。)である。この意味における準備書面には、@準備書面という表題の書面(民訴法161条)のほか、A訴状に準備書面の内容が記載される場合(訴状の任意的記載事項=民訴規則53条1項にいう「請求を理由づける事実」)、B答弁書という表題の書面(被告が最初に作成する準備書面のこと=民訴法158条、民訴規則80条)がある。
  なお、当事者が準備書面を予め提出しない場合でも口頭による主張が許されないわけではなく、民訴法161条3項は「相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない」としているように、相手方が在廷しているときは準備書面で予告していない主張も陳述が可能であり、相手方が在廷していないときに限って準備書面で予告していない主張は陳述することができないのである。
  そのほか、準備的口頭弁論(民訴法164条以下)、弁論準備手続(民訴法168条以下)、書面による準備手続(民訴法175条以下)の終了又は終結後においては、新たな主張をすることを制限されることがある(民訴法167条、174条、178条)。
3 種類
  訴訟上の請求を理由あらしめ、又は理由なからしめる主張という当事者の行為は、基本的には、証拠により証明することができる事実に関する主張とこれに対する相手方の答弁とに分けられる。場合によっては、事実と同じく訴訟上の請求を理由あらしめ又は理由なからしめるという意味を有する具体的な法律効果の主張(例えば、「Aが(現在)甲建物につき所有権を有する」)がされることもある。
  ところで、法律論の主張には、抽象的な法律論の主張と「甲建物を所有している」というように具体的な法律効果の主張をする場合とがあるが、前者の抽象的な法律論の主張は、そもそも法解釈は裁判官の専権事項だから、当事者がなしても訴訟法的には無意味であり、あくまでも裁判官が事実上これを参考にするにすぎないのに対し、後者の具体的な法律効果の主張は、一個又は数個の事実主張に代えこれを簡易化したものとしてされる(事実に法律を適用した結果として具体的な法律効果が生ずる。)わけであるから、相手方当事者がこれを容認しているときは事実主張に代わるものとして訴訟法的意味を認めても差し支えなく、ただ相手方当事者がこれを容認しないときには訴訟法的に無意味とし、改めて本来の主張としての事実主張をさせれば足りる。
  したがって、当事者が主張する法的見解のうち具体的な法律効果の主張は、相手方当事者がこれを争わないときに限って主張として訴訟法的意味を有する(権利自白)。
  例:原告Aが被告Bに対し所有権に基づいて甲建物の明渡しを請求している場合において、原告Aが「Aは平成7年1月1日に甲建物の所有権を取得した」とか「Aは甲建物を所有している」と主張したときは、被告Bが「認める」と述べればこれらの主張は訴訟法上意味を有するが、被告Bが「争う」等と述べたときは無意味となり、改めて原告Aにおいて、Aが甲建物の所有権を取得するに至った事実の主張(建物の新築、取得時効、売買契約等に該当する事実)をする必要がある。
4 主張に対する答弁
  当事者の一方が事実主張(主要事実、間接事実、補助事実につき)又は法律主張(具体的な法律効果につき)をした場合、これに対する相手方当事者の答弁の仕方には4つある。
  @「認める」
  A沈黙 
  B「知らない」
  C「争う」「否認する」
  @の答弁は、相手方の主張が間違いない旨を述べることであり、相手方の主張が事実主張であるときは「自白」となり、法律主張であるときは「権利自白」となって、いずれもその主張事実ないし法律効果を立証する必要がなくなる(民訴法179条)。
  Aの答弁は、民訴法159条1項本文が「当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす」としていることから、自白が擬制される(擬制自白)。被告が口頭弁論期日に公示送達以外の方法で呼出しを受けたのに出頭しないときも、相手方たる原告の主張事実を自白したものとみなされる(民訴法159条3項本文、同じく擬制白白という)。
  Bの答弁は、民訴法159条2項が「相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する」としており、Cの答弁と同様、相手方の主張につき争ったことになる。
  @Aの答弁がされたときはその主張につき立証することを要せず、上記BCの答弁がされたときに立証の必要がある。
5 主張についての真実義務
  なお、この答弁が真実でなければならないかについては特に制限がなく、真実に反する答弁をしても訴訟法的制裁はないが、事実主張のうち補助事実の主張に属する文書の成立に関する主張(形式的証拠力の存在の主張)については、相手方が「故意又は重大な過失により真実に反して文書の成立の真正を争ったとき」は、過料の制裁があり(民訴法230条)、文書の成立の主張に対する答弁については相手方に真実義務がある。


目次に戻る

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析