第二 民事訴訟手続の構造

一 序
  民事訴訟の手続は、概ね、判決手続と強制執行手続とに分けられる。
  判決手続は、原告の訴え提起から裁判所の最終的判断である判決が確定するまでの手続を定めたものであり、原告たる私人が、訴え提起により、裁判所に対し民事紛争の解決を求めた内容が正しいかどうかを確定するための手続=権利の確定の手続である。
  強制執行手続は、判決等で債務者(被告)が金員の支払い等の給付を命ぜられたのに従わない場合、裁判所又は執行官という執行機関が、公権力を行使することにより、債権者(原告)の権利を満足させるための手続である。
  例:債務者が判決等により500万円の損害賠償金の支払いを命じられたのにこれを履行しないときは、裁判所は、債権者の申立てにより、その所有不動産を差し押さえた上、強制的に売却し、その売却代金を500万円の限度で債権者に配当する。強制執行手続には、現在民事執行法(民執法)が適用される。

二 申立て
1 申立て概念の多義性
  申立ては、原告が裁判所に対し求める判決の内容であるが、その概念をもう少し正確に説明する。
  例:AがBに対し甲建物の売買代金1000万円の支払を求めたい場合、これを民事訴訟の形で行うとすれば、裁判所を通して売主Aが買主Bに対し代金1000万円の支払いを求めることになるが、これは、原告Aの裁判所に対する要求と、原告Aの裁判所を通した被告Bに対する要求とに分けることができる。そして、原告Aの裁判所に対する要求は「訴え」と、原告Aの裁判所を通した被告Bに対する要求は「訴訟上の請求」ないし単に「請求」という。したがって、申立て概念を考える場合には、訴えと訴訟上の請求とを区別して考える必要がある。
  この場合、AがBに対し裁判所を通して甲建物の売買代金の支払いを求めるといっても、Aの主観的意図としては、Bからその代金を支払ってもらう目的であるから、「訴訟上の請求」の概念が申立て概念の中核になることは明らかであり、「訴え」は裁判外の請求を訴訟上の請求に引き上げるための手続行為と理解するべきである。
2 訴訟要件の意義
  国家制度の一環として民事訴訟制度が存在する以上、全ての裁判外の請求が訴訟上の請求として許されるものではなく、一定の要件を満たすものだけが裁判所により訴訟上の請求として取り上げられるが、これは「訴え」として適法か否かということであり、訴訟要件の問題である。
3 申立ての方式
 「訴え」ないし「訴訟上の請求」をするには、どのような方式を踏めばいいか。民訴法133条1項は「訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない」と規定し、また同条2項は、「訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない」として、第1号で「当事者及び法定代理人」、第2号で「請求の趣旨及び原因」と規定している。
  要するに、民事訴訟を提起しようとする私人は、@誰が原告となり誰が被告となるか(当事者)、及びAいかなる権利関係についてどういう判決を欲するのか(請求)を、それぞれ明示した「訴状」という書面を裁判所に提出することを要する、ということになる。
  例:AがBに対し甲建物の売買代金1000万円の支払いを求める民事訴訟を提起したい場合は、「Aが原告であり、Bが被告であること」及び「AB間で平成7年1月1日にされた売買契約に基づく甲建物の売買代金1000万円の支払いを求めること」を、それぞれ「訴状」と題する書面に記載して、裁判所に提出する。
4 当事者
  当事者とは、原告と被告とを総称した概念であり、当事者となり得る資格を当事者能力という。当事者能力については、民訴法28条が「当事者能力…は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法その他の法令に従う…」とし、同29条が「法人でない社団又は財産で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる」としていることから、民法上の権利能力を有する自然人及び株式会社、財団法人等の法人が当事者能力を有する(民訴法28条)のみならず、「○○小学校PTA」というような権利能力なき社団又は財団も当事者能力を有する(民訴法29条)ことになる。
 (1) 当事者の特定
   ところで、具体的な民事訴訟において、誰が当事者なのかを決する基準は何かという問題、すなわち当事者の特定の問題がある。
  →訴状の表示により決せられるといういわゆる表示説が通説。
  例:CがAと称してBを相手として訴えを起こしたいわゆる氏名冒用訴訟の場合、表示説によれば、訴えを提起したのはCであっても、訴状には「原告A」と表示されている以上、原告はAとなる。ただし、この場合、Aには訴訟を追行する機会が与えられていないので、判決がされてもAにはその効力が及ばないと解される。
   他に意思説(被告は原告の意思を中心として、原告は被告の意思を中心としてこれを決めるというもの)と行動説(行動を中心として当事者を決めるというもの)がある。


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