第一 民事手続の理念ー私的自治の原則と後見的介入

一 民事紛争に対処する国家(主として裁判所)の基本的態度ないし理念は、私人間に民事紛争が存在する場合、基本的には当事者間の自主的解決にまかせ(私的自治)、ただ当事者間で自主解決ができないときに、そのできない限度で国家が紛争解決に介入(後見的介入)するというものである。
  すなわち、私人間に民事紛争が存在しても、国家にとっては直接の利害関係がないから、基本的にはどのような形で紛争解決がされてもよいが、当事者間で任意の解決ができない場合にそれを放置すると、暴力沙汰となったり、或いは力の強い者が弱い者に無理強いする等という不公正な形で紛争解決がなされたりすることがありえ、社会秩序の維持という点で問題がでてくるので、国家がその紛争を公正に解決するという必要性が生じてくる。

二 解決制度
  現在の我が国の民事紛争の解決制度を、私的自治の要素の強いものから順に説明すると、
1 和解契約
  民事紛争の当事者である私人と私人とが「互ニ譲歩ヲ為シテ其間ニ存スル争ヲ止ムル」旨の合意(契約)をすることによって解決する(民法695条参照)。
  例:交通事故により怪我をしたとする被害者Bが加害者Aに対し損害賠償金1000万円を要求し、Aが自分には過失がない等としてこれに応じないでいたところ、その後AとBとが500万円でこの紛争に決着をつけることに合意した場合。
2 調停
  民事調停法(民調法)に規定されている手続であって、当事者の一方の申立てにより、簡易裁判所又は地方裁判所の調停委員会(裁判官1名、調停委員2名)が当事者双方を呼び出し、「当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図る」ため(民調法1条)、いろいろな解決案を示し、その結果当事者間で紛争解決についての合意が成立したときは、これを調書(調停調書)に記載することによって終了するもの(なお、調停委員会が当事者間に合意成立の見込みがないと判断したときも、調停不成立として事件は終了する)。
  調停調書に合意内容が記載されたときは、その記載は和解調書及び確定判決と同一の効力を有する(民調法16条、民訴法267条)ので、合意内容が履行されないときは、給付(作為又は不作為)を内容とする条項である限り、強制執行が可能である。
  裁判所の調停委員会が、相手方を呼び出して話合いを強制したり(民調法34条参照)、また紛争解決の斡旋案を当事者双方に示すなどの活動をすることから、国家の後見的介入の度合いもある程度存在する紛争解決形態である。
  例:交通事故の被害者Bが簡易裁判所に加害者Aを相手として損害賠償金1000万円の支払いを求めて調停(交通調停)を申し立て(民調法33条の2)、調停委員会の斡旋により500万円の支払いで話しがついた場合。
3 仲裁
  公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律(旧民訴法)786条以下に規定されている手続であって、当事者間の合意(仲裁契約)によって仲裁人を選定し(786条)、その仲裁人が、当事者双方の言い分を聞くなどして事実関係を探知し(794条)、その結果に基づき仲裁判断という名の判断を示して紛争を解決するもの。
  仲裁は、仲裁判断が示された以上当事者双方はこれに不服であってもその判断に服さなければならない点で、和解契約及び調停と本質的差異があるが、仲裁契約という当事者間の合意がない限り仲裁手続は開始しないので、私的自治の側面が残っている。
  例:交通事故の被害者Bが加害者Aに対し損害賠償金1000万円を請求し、Aにおいて自分は無過失である等としてこれに応じないでいるときに、AとBとが仲裁契約を締結して第三者Cを仲裁人に選任し、仲裁人Cが仲裁判断として加害者Aは被害者Bに対し損害賠償金500万円を支払うよう命ずることとした場合。
4 民事訴訟
  民訴法1条以下に規定されている手続であって、当事者の一方が原告となり、相手方を被告として、裁判所に対し自己の権利の救済を求め、裁判所において事実関係を糾明するなどの審理をして、判決という形の判断を示し、紛争を解決させるもの。
  民事訴訟は、仲裁のように当事者間の訴訟による旨の合意も必要でなく、また判決という形で裁判所の判断が確定すればその内容に不服であっても当事者双方はこれに従わなければならず、国家の後見的介入の度合いが最も強い紛争解決形態である。
  例:交通事故の被害者Bが原告となり、加害者Aを被告として損害賠償金1000万円の支払いを求めて裁判所に民事訴訟を提起し、裁判所がAはBに対し500万円の損害賠償金を支払うよう命ずる判決をする場合。
  なお、民事訴訟は、民事紛争解決制度中の最後の砦ないし最後の手段とはいっても、当事者間の自主的解決が望ましいという理念はあり、民事訴訟係属中においても、裁判上の和解(民訴法89条、267条)、受訴裁判所の調停(民調法20条)という形で、和解契約ないし調停に戻る手続が用意されている。
5 その他 
  即決和解(訴え提起前の和解、民訴法275条)、支払督促(督促手続、民訴法382条以下)などの手続があり、即決和解は和解契約と調停の中間に、支払督促は民事訴訟の前段階として位置づけられる。


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